彼女の世界が変わらぬ理由


それから半年後。

父方の実家に行く機会があった。

ある程度日本語を話せるようになっていたマリア。

真っ先にあの少年に、お礼を言いに行くつもりだった。

しかし、訪れた小学校には彼の姿はなく。

家庭の都合で急に引っ越していったことしか、知ることはできなかった。

それからだ。

マリアが絵を描くようになったのは。

あの少年の影を追うように、彼が描いてくれた桜を描くようになったのは。

描き続けていれば、いつか会えるかもしれない。

そんな夢を見始めたのはただ、あの時のお礼が言いたかったから。

彼がくれた絵はいまも、マリアの部屋に額におさめられ、飾られている。

色褪せても、マリアの中でその絵は変わらずに、輝き続けていた。




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