彼女の世界が変わらぬ理由
もしかして、少女は口がきけないのではないだろうか。
そう考えていたが、ある時友だちに言われた。
「転入生って、キコクシジョなんだってさ」
「キコクシジョ? 何それ」
「よくわかんないけど、外国にいたんだって。だから日本語しゃべれないらしいよ」
その話を聞いて、十夜は納得した。
無愛想なのではなく、言葉が理解できないだけだったのだと。
「キミ、日本語しゃべれないんだってね」
いつもの場所で彼女と会い、反応には期待せず話しかける。
少女は首を傾げ、すぐに窓の外に目を向けた。
「ねえ。いっつもキミ、何見てんの?」
グラウンドで遊ぶ生徒を見て、うらやましく思ったりしているのだろうか。
そう考えながら彼女の視線を追い、十夜は気づいた。
少女の黒い瞳に映っていたのは、桜の木だったのだ。