彼女の世界が変わらぬ理由
次の日の昼休み。
先に美術室いた少女は、泣いていなかった。
ただ目は真っ赤で、ずっと泣いていたのだろうことは十夜にもわかった。
「目、ウサギみたいになってる」
赤い目尻をつつくと、少女はわずかに頬を染めてうつむいた。
そこですかさず、画用紙を差し出した。
「これ、あげる」
少女は目を見開き、十夜を見上げた。
昨日彼女が転校することを聞いて学校に戻った十夜は、いつか見たあの気の早い桜を描いたのだ。
どうしても最後に、少女にあの桜を見せてやりたかったから。
「こういうの、狂い咲きとか、早咲きとかって言うんだって。一回だけ俺、見たことあるんだ」
言葉が通じなくても別に気にはしない。
「春になったら見に来いよ。ここの桜」
わからないだろうに、少女は小さく頷いて、絵を受け取ってくれた。
そして十夜が好きな、満面の笑みを見せてくれた。
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