彼女の世界が変わらぬ理由
「キミがこれまで描いた絵をすべて見たい」
そう言ってきたのは、飛田で三人目。
一人目は入院中の顧問だ。
さすがにすべてを見せることは難しく、マリアは美術室に置いてある、高校に入ってからの作品だけを見せた。
いや、飛田が勝手に見たと言った方が正しい。
柚木マリアが絵を描きはじめたのは十年前。
まだ小学生だった頃。
一番最初の絵は、クレヨンで描いた。
それから色鉛筆、水彩画、油彩画と、時と共に使う材料は変わり、技術も上達していった。
ただ一つ変わらないのは、彼女の絵。
冬と春の両立された世界は十年間、ずっと変わらずに描かれ続けた。
その総数、537枚。
すべて同じものが、同じ構図で描かれている。
それが彼女が『変わり者』と呼ばれる所以だ。