Bitter Sweet
3.嵐のような夜
昂くんが入社してきた週末、ささやかながら歓迎会を開くことになっていた。
同じシマの10人と、係長と課長、というメンツで。
幹事は高梨だ。

既にいい時間になってきたので、みんな歓迎会のために今日は早々に仕事を切り上げ始めている。

そんな中、
「桃瀬さん、もう仕事上がれます?」
取り澄ました顔で高梨が聞いてくる。
「…まぁ。あと片付けるだけだから。」
「じゃあ、悪いんですけど、会場先に行くの付き合ってください。手伝って欲しいことあるんで。」
ニーッコリ、笑っているけれど、目は笑ってないような。
なんとなくイヤな気配を察して、断ろうかな、と思ったと同時に、
「さ、片付けるの手伝いますから。早く早く!」
私の机に散らばった資料をトントン、と勝手にまとめ始める。

……これは。
有無を言わせぬ行動、ね?

はぁ、とため息をつき、
「はいはい。分かりました。」
観念してちゃちゃっと片付け始めた。



「じゃ、お先でーす!!」
「お先に失礼します~。」

「おー、じゃあ後でな。桃瀬、悪いが手伝いよろしくな。」
さっきの会話を聞いていたんだろう、係長が気遣ってくれる。
「はい。ではお待ちしてますね。」
軽い会釈をして、高梨と並び出て行った。
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