プラトニック・プラネット



***



あれから数日後。

サボさんはすっかり、2年2組のアイドルと化している。



「おはよーサボさん」

「今日も元気いっぱいだねえ」



高校の教室。でかいサボテンの前で騒ぐ女子。

それが日常風景となりつつあるこの頃。



なにかおかしい、と感じる人はもはや皆無である。





「和泉さん、おはよう」

「あ、おはよ風間くん」

「サボさんもおはよう」



トゲだらけのワイルドなサボさんの肌を、指先でそっと撫でる風間くん。


その愛おしげな手つきと視線に、胸のあたりでなにかがもやっとして。

 
なんとなく。

ほんとうになんとなく、だけど。

こっちを向いてくれないかな、なんて思っていると。



「世間って風当り厳しいっていうじゃない」


不意に、風間くんが振り向いた。



「……そうだね。どうしたの急に」


「しかも汚くて冷たくて、大切なものを見失うくらい毎日が忙しくてさ」


「………」


「それでも、こんなトゲだらけになってまで守りたいものが―――きっと、あったんだろうね」


「……」


「……」


「……風間くん」


「なに」


「それはサボさんの話?」


「そうだけど」


「……」


「……」


「…………やっぱ森に帰してきなさい」


「え、なんで。やだよ」




***


「3.サボテン騒動」end.


< 15 / 37 >

この作品をシェア

pagetop