婚恋

苦しいよ・・・

「もしもし・・・」
「俺・・・」
知ってるよ。
でも正直今はそんなツッコミを入れる余裕などなかった。
「何でしょうか・・・」
「わりぃ・・・まさかあんなとこで会うとは思わんかった。」
「仕方ないんじゃないの?ブーケ注文するのに作り手の名前まで
知る必要なんかないんだから」

 なんでもっと優しく言えないの?私って・・・どれだけ
 心狭いのかな・・・
 好きな人の幸せを願ってあげなきゃいけないのに・・・
 自分が嫌になる
 
「そう・・・だよな・・・」
なんで?なんでそんな寂しそうに言うの?
私の言い方がきついから?

「で・・でも式のお役に立てるんで頑張って
素敵なブーケとブートニアを作らせていただきます。」
「・・・・・うん」
だからどうしてそこ喜ばないの?
そんな言い方されたら結婚したくないのって思っちゃうじゃない。
「あっ!そうだ・・・あのね・・・結婚式なんだけど
今回お花の仕事うけちゃったでしょ?だから・・・私裏方に回ろうかなって」
「裏方?」
「うん。参列者としてではなく、仕事として見守ろうかと・・・だから
 今、招待状の欠席の所に○をつけようとしたんだよね。」
「・・・・・・」
ちょっとノ―リアクション?
それはそれで困るんだけど。
「陸?」
「あ?ああ・・でもそれじゃ・・・」
「・・・・それじゃあ何?」
私はその方が正直楽なんだよ。
幸せそうなあんたたちの姿を少しでも見なくて済むんだから。
「・・・いや・・・何でもない。」
「陸」
「ん?」
「・・・おめでとう」
「・・・・ありがとう」
「じゃあ・・・」
私は一方的に電話を切った。
これ以上は耐えられなかった。

おめでとうなんてこれっぽっちも思っちゃいないんだから
あんな奥歯に物が詰まった様な言い方されたら
勢い余って好きだったって言いたくなるじゃない。
言ったってどうにもならないこともわかってるのに・・・

苦しいよ・・・
好きってこんなに苦しんだ・・・
紺野さんの時よりも辛いわ・・・
涙でぼやける葉書に私は
○をつけたもちろん

欠席に・・・・
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