俺様王子様に振り回されて
「意味、解んねぇ・・・」


くしゃりと前髪をかきあげた時、肩に手が置かれた。




ぽんっというような軽いものではなく、ずんっとした重い感じ。



まるでゾンビに捕まったかのような錯覚に陥る。





おそるおそる首を曲げ、後ろを見れば――




「ハぁルぅぅぅぅぅ・・・」



もの凄く哀しそうな顔をしたアキが立っていた。




ゾンビ並みに気味悪く見えるのは逆光だからだろうか・・・。


後ずさりしたくなるのを必死にこらえる。




「どうした、アキ。ゾンビっぽいぞ。」


眉をひそめて言えば、アキは力なく笑った。



「ハハ・・・確かに俺、一回死んだからね。」





・・・・・・・・・うん。



「精神科、行くか。」
「え。病院ヤダ。」


アキ、即答って・・・子供かよ。

ため息を吐きつつ、俺は歩き出した。



「アキ、話は俺の部屋で聞いてやる。来い。」


そう言い、アキの顔を見れば、アキは嬉しそうに笑った。




「ハルの部屋のテレビ、デカイから好きなんだよね!」






やっぱアキ。

単純だな。



苦笑いしながら、俺はアキと学校を出た。









そして、他愛無い会話をしながら、帰宅した。









「鞄とかは、そこらへんに置いとけ。」



"そこらへん"を指で指した後、俺は麦茶をグラスに入れて、テーブルに置く。



それから、アキの真正面にあぐらをかいた俺。


アキは"一回死ぬに至った経緯"を話すべく、口を開いた。






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