私たちで奏でる物語

「ナ、イトく……」

「――俺達に《偽善》は要らない」


低い、怒りに近い声が私の耳に響く


「俺等は俺等の勝手で、お前を守りたいと思った。つまんない事、気にしてんじゃねぇよ」


龍君がクスリと微笑したのが掌から伝わる


「で、も……私。お礼も何も言えなくて、……失礼な事ばっかり言って。」

「ううん。僕等も勝手に入って域が過ぎた、って考えたんだ。うん、苦しめて――本当にごめんね」


恋君が優しい声で言う


「私、絶対嫌われて――」

「んな事……」

「あるワケないじゃん!!」

「……バカか、お前は」


三人の優しくって甘くって、そして心から温かい言葉が私を包む


「ふぅ……っ!!」


私は人生で初めて人前で大声を上げて泣き叫んだ

きっとこんな幸せは、また長くは続かないんだろう

もう、随分慣れた

でも、今は、この幸せが一分一秒も長く続いて、と願おう





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