東京物語
三章



あの人が探しておいてくれた店で
夕飯を食べた

でも 思いのほか
食事は喉を通らなくて

「どんどん食えよ」

の あの人の言葉に
答えられなかった

店を出てから 駅へと歩く

「なんだか盛り上がらないね」

とまた 何時間か前にも言った言葉を
あの人は言った

「そうかな?普通じゃない?」

「三日しか一緒に居られないんだよ…それなのに、普通でいいの?」

電車は来て あの人は黙って乗った

あの人は 少し怒った感じに言ったけれど

私は この人がこんな事を思ってくれていた。と いうことに 嬉しかった

いろいろ話そうと
引き出しに用意していたものの

逢ってしまったら
私が持ってきた ローカルな話しは

環境の変ったあの人には
くだらないような気がして話さないでいた

でも このままではいけないと
心機一転 考え直すことにした



< 10 / 36 >

この作品をシェア

pagetop