龍神様との恋愛事情!



 下へ下へ。

静寂が支配する川の底へ。

手を縛られたまま、私は沈む。


息ができない。

苦しい。


怖い……怖い!!

怖い怖い怖いっ!!!!

死にたくない!!

伊吹様っ!伊吹様!!



もがいて水面に出ようと必死だった。

けど、段々どちらが上なのか下なのかさえ見当がつかなくなって…。

流れに身を任せて…。


ただ独り、水底で――伊吹様を思い続けてた。



いつかの夢と一緒だ。

私は一人、水底で溺れそうになっていて…。

そこに伊吹様が来て助けてくれた。


出会いも同じ。

伊吹様との出会いも川だった。

私は溺れてた。



伊吹様……早く来て下さい…。

怖いよ……苦しくて、辛くて…寂しくて…暗闇しか見えない。


伊吹様…。


いぶき、さま…。



もうすぐ…きてくれますよね…。


わたしは、ここです…。


みずの…そこで――あなたと、であったところで…ずっと…。


あなたを…まっています…。


だから、どうか……はやく、みつけて…ください…。



いぶき…さま…。


イ…ブ…キ、サ――





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