揺れる恋 めぐる愛
「お二人様ですか?」

「ああ。プライベートスペースは開いてるか?」

「はい。こちらです。ご案内します……」

俯いたまま主任に手を引かれて歩く。


「では、ごゆっくり。

御用の時はこちらで……」

案内役はボタンを指さし、頭を下げてその場を去った。


主任はゆっくりと手を離して……

「とりあえず座れ……」

私の躰をスペースの奥に向かって押し込んだ。

私は無言で仕方がなく2人掛けの椅子の思いっきり端に腰かける。

当然のように主任は、少し距離を開けながらも……

隣に座った。


「ここなら、大声を上げさえしなければ、誰にも聞こえない。

何をあんなところで取り乱している?どうした?

何があったんだ?」


私たちは恋人でも、友人でも、知人ですらない……

それなのにこんな勝手な男になんで自分自身ですらわからない

このモヤモヤとした思いを吐露しなければならないのだろう……


「何が気に入らなかった?

思ってることがあるなら俺にははっきり言え……」

私は口をつぐむ。気に入らない?

気に入らないことばかりだ……

この人には何も語りたくない。

お互いを沈黙が包み込む。


それでもやっと口を開こうと息を吸った瞬間、

「藤木、そんな奴やめてしまえ!!」

と唐突に言った。
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