揺れる恋 めぐる愛
今の先輩には、たぶん何を言っても……

無駄だ。

「なんで、私がわざわざ帰ってきたと思う?

配属されたばっかりで覚えることもたくさんあって

まだまだ余裕なんてなかったけど、

でも、先輩の事が大切だと思っていたから……

誕生日ぐらいきちんとお祝いしたくてすごく無理したのに……

もういい!!!」

私は悲しさと辛い気持ちを押し殺し、唇を噛んで睨み上げた。

それから握られていた手を思い切り振り、先輩の手を振りほどいた。


そして……

先輩の見ている前でさっきもらったばかりの……

指輪を薬指から乱暴に外した。

怒りが込み上げてきて治まらなくなり……

先輩に向かってそれを投げつけようと手を振り上げる。

一瞬その場が凍りつき、視線を絡めるとバチバチと火花が散る。


先輩も、私も……

お互いに考えを譲る気がない。

空気でそれがお互いに伝わってしまった。

振り上げた手をテーブルの上に叩きつけ、

そばにあった紙を一枚ひったくって私はその場を早足で歩き去った。


そしてレジで会計を済ませ、足早に一人屋外に出る。

さっきの桟橋から見えるイルミネーション。

とてもきれいな光を見ながら、顔を空の方に向けた。

これ以上込み上げるものが零れ落ちないように……
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