jack of all trades ~珍奇なS悪魔の住処~【完】
香さんのときもそうだが、悪魔が怒ると、恐ろしいを通り越す。
威力という圧力に精神がプレスされるような、骨の髄まで凍らされるような・・・・・・感情が無へと追いやられていく。
要するに、自分の考えなんてものを抱く余裕はなく、ただその悪魔の威力に圧倒され、洗脳されたような錯覚に陥ってしまうのだ。
誰もが無言だった。
龍は言い切って、我に返ったのか、あっけらかんとして言った。
「すまん。ちょっと言い過ぎたな。まぁ、頑張れ。まだまだ若いぞ」
秀斗は黙っているかと思いきや、なんと大声で笑い始めたのだ。
「す・・・・・・すみません、千砂斗さん。どん底にいるはずなのに、何だか可笑しくって・・・・・・。千砂斗さんのくれた熱いメッセージは、ちゃんと響いてきましたよ。響いたというか、鎧をぶち壊してくれたと言ったほうが、正解かもしれない。今、すごい感情が自分を支配しているんです」
千砂斗さんは、興味深々に、秀斗を見た。
「ほぉ、それはよかった。それで、どんな感情なんだ?」
わたしも気になって秀斗を見ると、なぜか顔を赤らめていた。
(んっ!? 何!? これは、何かが起こる・・・・・・)
悪いことではないだろうが、この異様な雰囲気からみて、重大事件が突発する可能性は、100%に近いと思えた。
「千砂斗さんの弟子にしてください。いろんな意味で」


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