jack of all trades ~珍奇なS悪魔の住処~【完】
ルート
結婚式のために、2日間、ペットショップの仕事を休ませてもらっていた。
昨日、片付けを終えたあと、すぐに写真を現像しに行き、お婆さんに見せに行った。
帰り際に、もう少し見たいと言ってきたので、写真を置いて帰ることにした。

早朝、ペットショップに向かっているわたしの隣には、千砂兎さんがいた。
仕事があるので、別荘に遊びに行けないことを伝えたら、一緒に手伝いたいと言い出したのだ。
さて、お婆さんは、この人物が、我が孫の元妻であることに気付くだろうか?
わたしは、内心、冷や冷やしっぱなしだ。
当然、気付いて欲しいとは思わない。
この2人が衝突したら、ややこしいことになりそうだし、第一、デリケートな小動物たちは、怖気づいてしまい、後々、痛々しい人生を送る破目になってしまう恐れが出てくるからだ。

「師匠~! おはようございます!」
いつものように、店内へ入ると、すでにお婆さんはカウンターの椅子に座っていた。
しかし、珍しいことに、テレビを付けっ放しにして寝ていたのだ。
腕を枕代わりにして、カウンターに上半身を伏した状態で、掛け布団もしていなかった。
(わたしがいなかったから、疲れたのかな?)
そりゃそうだろう、かなりの高齢者だ。
働いているのが、奇跡に近い。
「こんなところで寝たら風邪引きますよ~」
掃除道具を出しながら、お婆さんに話しかけた。
千砂兎さんは、お婆さんの傍に行ったあと、何故か神妙な面持ちでわたしの方に向かってきた。
そして、自分の上着をわたしの頭にスッポリ被せた。
「どっ、どうしたの? 遊んでたら、師匠に叱られちゃうよ」


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