雪の足跡《Berry's cafe版》

「だって、なんか、怖かったから」
「ちょうど……」
「ちょうど?」
「6月だな」


 ジューンブライド。


「梅雨時かよ」
「えっ?」


 雨じゃ寒いな、と舌を鳴らす八木橋。更に、ガーデンチャペルは蛙の合唱だな、とクスクス笑う。


「そ、そっち? 6月の花嫁は幸せになれるって言うのよ、知らないのっ??」
「そんなの知らねえし」


 母が出来上がった料理をテーブルに置きながら、あらあら夫婦喧嘩?、とからかう。

 不安が消えた訳じゃないけど、こうして八木橋がそばにいてくれて、“出産”の先輩である母がそばについていてくれて、私は幸せなんだと実感した。何も迷うことなんてない、不安よりも新しい生活への希望の方が大きかった。時々、自分のお腹を見る。望まれて生まれてくる小さな小さな命を大切にしよう、ちゃんと育てなくちゃ、と手の平でそっと押さえた。






< 231 / 412 >

この作品をシェア

pagetop