雪の足跡《Berry's cafe版》

 仕事帰りにショッピングモールに寄った。書店で結婚情報誌を買う。子供服を眺めてたところで携帯が鳴った。


「もしもし」
「今どこだ?」
「ショッピングモール」
「何、油売ってんだよ」


 腹巻きして早く寝ろ、と八木橋はからかう。心配したり驚いたり、私以上に慌てる八木橋。もう既に父親になってるのだと感じた。


「……今、子供服の前」


 気が早いだろアホ、ついてるかどうかも分かんないのに、と笑われた。

 私は幸せだった。あれから3日、まだ悪阻も酷くなく普段通りに過ごせてる。平日はメールだけだった八木橋も、いろいろと相談事があってか毎晩電話を掛けてくる。宿舎に空き部屋があるとか6月の第2週なら式場が空いてるとか。まだ八木橋の両親に挨拶もしてないのに八木橋の方が気が早いと思う。


「……コユキ、元気か?」
「え?、誰」
「だから決まってるだろ。ユキの子だからコユキ」


 まだ分かる訳ないじゃない、と八木橋を怒る。既に赤ちゃんにニックネームを付けて嬉しそうに話す。親バカを超えて馬鹿親だと思う。


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