雪の足跡《Berry's cafe版》
八木橋は屑かごに始末したものを投げ入れ、頭を掻いた。
「……そんな子じゃねえよ」
『お前に言われなくても大切にしてたぜ?』
『彼女のこと悪く言うなよ』
『嫌いで付き合うかよ』
自分から聞いておいて馬鹿だと思った、八木橋の彼女への気持ち。八木橋は絶対彼女の悪口は言わない。普通、別れたら文句のひとつや二つ出るものだと思う。何故気付かなかったんだろう。
『雪山には来れそうになかったからな』
雪山に来れないから別れた。私と付き合ってるのは猪苗代に行ける女だから。八木橋だって29になる。そろそろ手近なところで手を打つ気になったのかもしれない。なら、彼女が雪山に来るって現れたら、八木橋は彼女を選ぶ……?
「……行かない」
そんな男と結婚して幸せになれるだろうか。彼女が八木橋の前に現れたらって怯えながら過ごす。私はそれに耐えられるか、って。恋人なら別れることも出来る。でも籍を入れてしまったらおいそれと離れることは出来ない。この先何年も何十年も。
「休みだって言ってただろ?」
「月初は急に仕事入るかもしれないし」