雪の足跡《Berry's cafe版》

「ユキ、一緒に生きていこう」


 そう耳元で囁かれて、私は八木橋に何回プロポーズされただろう、何回求められただろう、と女冥利に尽きていると突然抱き上げられた。



「今夜は寝かさねえからな!」
「えっ??、会話の流れを断ち切らないでよ、やっ……きゃあ!」
「うるせえよ」


 洗い物もそのままに八木橋は私をソファに降ろして押し倒す。唇を重ねる。八木橋の舌は甘いチョコの味がする。後頭部を押さえられて唇を離すことも許されず、息苦しくて八木橋の胸を押し返す。でもそんな程度で八木橋の体が動く筈もなく。


「ヤ、ギ……苦し……」


 そう言うと八木橋は一瞬、私から離れた。そして胸を押していた私の手を一掴みにすると私の頭の上へと運び、ベッドに押さえ付けた。


「へ?……やっ」
「邪魔」


 八木橋は再び口を塞ぐ。息をする余裕すらない濃いキス、私は足をばたつかせて抵抗したけどそれも無駄に終わる。

 八木橋は宣言した通りとはいかないまでも、しばらくの間、私を離さなかった。時折、休憩を挟むように腕枕をしては私の前髪を梳く。それは朝早く目覚めてからも続いて、どんなに触れ合っていても足りなくて。
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