雪の足跡《Berry's cafe版》

「澪。ありがとう」


 元カノは頷くとタクシーへ乗り込んだ。目は潤んでいたけど笑顔だった。タクシーの扉は閉まり、発進した。ロータリーをぐるりと回り、ホテルを出ていく。酒井さんはしばらくタクシーを目で追っていた。


「行っちゃったね、澪ちゃん」
「ああ」


 八木橋はボリボリと頭を掻いた。


「きっとさ、また来ると思う」
「そだな」


 酒井さんと八木橋はボソリと会話する。


「青山さん、変な意味じゃなくてさ。ホテルスタッフをしてると何となく匂いで分かるんだ。また来てくれるお客様。ヤギだってまた来てくれるスキーヤーって何となく分かるでしょ」
「ああ」


 酒井さんが、俺達もホテルスタッフとしてはベテランの域に入ったってコトかな、と言うと、八木橋は、アホ、偉そうに言うな、と言って酒井さんの頭を小突いた。








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