雪の足跡《Berry's cafe版》

 元カノを見送った後、八木橋と宿舎に行った。久々に入った八木橋の部屋。相変わらず殺風景だった。


「……悪かったな」
「ううん」


 思いがけず元カノと顔を合わせてしまったけど、返ってスッキリした気はした。恋敵の筈なのに可愛く思えた。同じ人を好きになった同志というか戦友というか。

 そうだ、恋敵と言えば……。


「ねえ。そういえばムカつくんだけど」


 八木橋は少し驚いた顔をした。


「だから悪かったって言ったろ?」
「何、その言い方」


 菜々子。この部屋に泊めた上に写真を撮った。タキシードを着てデレた顔の八木橋。それに携帯番号。何故菜々子が私の携帯に電話をしてきたかって、八木橋が教えたとしか思えない。私と菜々子が知ってる共通人物は八木橋、強いて言うなら酒井さん。


「ヤギ、狡い」
「……」


 今思えば八木橋の策略だったとしか思えない。溝が開いてしまった私との関係を何とか修復したくて菜々子に電話させた、って。

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