雪の足跡《Berry's cafe版》

「ねえ、このままでいいの?」
「……」
「このまま結婚して子供を育てて、それで満足?」
「……」
「それで私が恋雪が納得すると思うの?」
「だからって遊んで暮らす訳にはいかねえだろっ!」
「ずっと技選選だけを見てる訳にはいかない。でもせめて子供が生まれる前にヤギには挑戦してほしいの。じゃないと私が後悔しそうだから……」
「ユキ、でも」
「遠慮するなって言ったのはヤギの方でしょ? 何故ヤギは遠慮するの??」
「……」


 八木橋は再び黙り込んだ。怒っただろうか、呆れただろうか。


「……本当にいいのか?」
「うん……」
「おい、クビになるかもしれないんだぞ?」
「いいじゃない、バイトなら雇ってもらえるでしょ」
「ああ。でもバイトじゃ、ユキのお母さんにも亡くなった親父さんにも合わせる顔が無い」


 私は再び父の遺影を見た。勿論笑っている。でも頷いてる気がした。ユキがいいならそれでいい、って。父なら八木橋の気持ちが分かる筈だから。


「亡くなった父も応援してくれると思う」


 隣にいた母に目を合わせると母も頷いた。


「母さんも賛成してくれるって」
「ユキ……」


 しばらくして、八木橋はようやく考えてみると言い、通話を終えた。








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