ポケットダーリン

「ただいまー」

結局帰ってきたのは15時過ぎだった。

今日は少しだけでも、いつもよりは一緒にいられたはずだった。叶人が営業終わり、真っ直ぐ家に帰ってきていれば。


台所を横切る。

「ウェップ‥食い過ぎたー」

ベッドに横たわるあたしの思いに気付きもせず、叶人は黒いスーツを脱ぎ散らかす。

ボクサーパンツ1枚になると、もぞもぞとベッドに潜り込んできた。


ご飯のことはスルーだ。

腹が立って叶人に背を向ける。

すぐに叶人の手が絡みつく。


「やめてよ!」

乱暴に拒絶する。


いつもなら、「どうした?」「俺、何かした?」って聞いてくれるはずだった。

仲直りのキッカケを、与えてくれるはずだった。


何も発しない叶人に不安になって振り返る。

しょぼんと目を伏せた叶人が目に映った。

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