おかしな国のアリス
「アリス?」
にこりと笑顔のまま、男性が私の方を見、サングラスを眼が見えるまでずらした。
そのまま、さっきまで焦点の合わなかった瞳が、私の眼とばっちり合う。
「なん…――ッ」
ぐらり。
視界が、歪んで。
目の前のこの人が、2人に見えて。
ふわふわ。くらくら…
「アリス!!アリス!!」
ああ、兎…白兎?
3人、居る…
「アリス!!」
バシンッ!
「ッ!」
目の前で突然、破裂音が…
「あ、れ…わたし」
そのせいでくらくらがなくなって、男性も白兎も1人になった。
「…ふふ、失敗失礼…」
言葉とは裏腹に、とても楽しそうな声。
「…この…ッ」
「ああ、争うつもりはありませんよ。…出来ればあなたとは二度と争いたくない。」
…二度と…?
「君達がそうして僕らの邪魔をするのなら…いつでもこらしめに行きますよ。」
男性はくすっと笑って、
「怖い怖い…白兎は凶暴ですこと。」
言いながら、すす…っと、男性の足下が薄く透ける。
「ではまた、白兎」
白兎が何も言えないうちに、男性は消えた。
「いま、のは…」
やっと口を開く私。
入り込める空気じゃなかったし、頭ぼーっとしてたから…
…まぁ、どうでもいいんだけど…
「…今のは、女王の僕であるトランプ兵です。意地の悪い奴等なので、あまり関わりあいにならない方がいいですよ。」
にこ、といつもの笑み。
「…」
「ところでアリス、どこか異常はありませんか?」
不安気に尋ねてくる兎。
私はうーんと少し唸って
「異常…ないよ?」
答えた。
それを聞いて、兎は安堵したみたいで。
ぐったりと私にもたれてきた。
「し…白兎ー…?」
顔色が若干よくないみたい。
私はその場に正座をして、白兎を膝枕してあげた。

眠る白兎の過去には、何か…深い物語があるみたい。
…まだまだ、彼の過去に振り回されそうだなぁ…
白くてふわふわな髪に触れながら、溜め息をついた。
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