おかしな国のアリス

◆白兎のところへ

「くんくん」
「…」
「くんくん」
「…」
…まぁ、やっぱりと言えばやっぱりだけど…
道に迷った。

…。
「匂いでわかるんじゃなかったの?」
「いやぁ…匂い全然しないんですよね」
「じゃあどうするのよ!」
トランプ兵はうーん、と考え込んでから言った。
「ならば耳で」
「あなたの五感は信用できないわよ!」
言うと、トランプ兵はしゅんとしてしまった。
ああ…扱いにくい。
「とりあえず歩きましょう?ここで立ち止まっててもしょうがないよ。」
「…そうですね!」
…はぁ。
とは言ったものの…
やっぱり全然見当も付かない。
「あ!」
「えっ?なにか見つけたの?」
「あのですね、迷路は昔から、壁に手をついて進むと抜けられるのって聞いた事があります。」
「ふーん…
…いや、抜けちゃだめでしょ?」
「あ…そうでした」
あはは、と頭をかくトランプ兵の目の前に、閃光が。
「はい?」
続いて罵声。
「てめぇら、いつまでやってんだ!おせぇよ!」
暗闇の奥から近付いてくる影は…――
「猫…!?」
「おうアリス。
まんまと道に迷いやがって。」
ばーか、と悪態をつくそれは、紛れもなく、猫で。
「ねこぉ…」
なんだか泣けてきて。
「あー…泣くなよ!俺がなにしたっつーんだ…」
「きっと安心したんでしょう…」
「ったく…
つーか、なんだよお前」
「私は女王に恨みのある、元トランプ兵です」
「信用ならねぇな」
「無理もないでしょうね…まぁ、事実ですから」
「…俺らになんかしたら、ぶっ殺すからな」
「おや、それは怖いですね…」
泣いてる私を放置して、二人が縁起の悪い会話をしてる。
「ま…とりあえず行くぞ。こっから結構近いし」
「ほ、本当?」
猫はうなずいて、私の頭を乱暴に撫で
「うし、ほら、こっちだ」
ぐいぐいと腕をひかれて進んでいった。
トランプ兵も、その後に続いた。
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