おかしな国のアリス
「お前の母親は、なにをしてんだかな…
なんにも教えられてねぇのか?」
相変わらず早足の猫が私に話しかける。
「う…うん…
内戦の事だって知らなかったもの」
「まじかよ…
…女王になんかされたのか?」
「わかんない…けどお母さん、よく女王様のお話してた。可哀想な人なんだから責めちゃいけないんだよって…」
「…アリスはもう女王のお手付きか…」
木を払いながら、猫が舌打ちする。
「…ごめんなさい」
「あ?…んなの、お前がこれから話してやればいいだけの話だろ」
「!…うん、そうだね」
呆れられると思ってたから、ちょっとびっくりした。
「で…白兎の時計が止まる意味を話してやるから、しっかり聞けよ…っと」
段差を登る私に手をかしつつ、猫が言った。
「うん。ありがと」
ん、と軽く返事をして、猫はやっと話し出す。
「白兎の時計は、永久に止まらないように魔法…みたいなもんがかかってんだ。
それが止まったっつーことは」
「魔法が…とけちゃったの?」
「…50点だな。
とけるというか…違う、強い魔法にねじ伏せられたって感じだな。」
「ふぅん…」
「それはこの国の時間すべてを止めるっていうことだ。
それは、内戦でも使われたやり方なんだよ」
「…え?」
時間を止めて、どうするんだろ…
一日中明るくて色々しやすい…?
「多分、今動いてるのは俺らと女王の一味位だ」
「う、うそ」
「嘘じゃねぇよ。
…動いてない方が殺しやすいだろ?
だから時間が止まってる間に皆殺しちまうんだよ。」
「…」
「それに、その方が楽だろ、やられる側も。
だから、これはリセットの準備。
それに、俺らに情報を渡さないのにも役立つしな。」
「じ、じゃあどうすればいいの…?」
猫はくるっと振り返り、人差し指を立てる
「そこで、白兎の本領発揮ってわけだ」
「白兎の?」
そうだ、とまた前に向き直って話す。
「白兎は、まだ動いている誰かの時の音を聞き取る事ができる。
つまり、今の状況は白兎にとっちゃ好都合ってこったな。」
「へぇー…」
なんか、やっと白兎が凄いって思えたような…
私は猫の背から少し見える白兎を見つめた。

なんだか嫌な予感がして、私は空を見上げた。
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