鉄の薔薇姫
序章



目を開けると天井の飾りが見えた。

正方形にライン状の装飾が成されたそれ。
レンカが日頃見ている天井ではない。

自分が普段見ているのは白の粘土で塗り固められた安っぽいものだ。

それじゃあ、ここは……。


レンカはカッと目を見開き、勢いよく身体を起こした。

広い居室。
簡素だが、立派な調度。
ベッドの向こう、執務机の前に裸の背中が見えた。


「すみません!眠ってしまいました!」


レンカは掛け布団から脚を引き抜き絨毯に下ろした。
ベッド脇に脱ぎ捨てられた衣類をかき集め、見苦しくないよう前を隠す。

執務机の書類を眺めていた人物が振り向いた。

普段は結い上げている黒髪がふわりと舞い、彼女の薄い乳房を隠した。
それ以外彼女の身を覆うものはない。

レンカは息を飲む。
近くで見るより、こうして一定の距離を置いた方が彼女の姿態は迫力がある。

細い腰、しなやかな筋肉のついた手足。

女性としても背は低い方だが、彼女を小さいと感じることは滅多にない。

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