鉄の薔薇姫
ここで男を見せることができれば、二人の上官にそれぞれ別な意味で好印象だろう。
レンカは剣を握り直し、つま先にじりと力を入れた。
斬り結ぶこと数回。
シアの剣が横薙ぎに頭上をかすめる。
大振りはチャンスだ。
レンカは身をかがめ、懐に入り込んだ……はずだった。
しかし、そこにあったシアの身体は、たった一歩の踏み込みでレンカの背面に異動していた。
余裕たっぷりにシアがレンカの後頭部を剣の柄で小突いた。
「動きが直線的過ぎる。腰と肩の向きで攻撃の角度が丸わかりだ。だが、反応はまあまあだ」
レンカは唇を噛み締め、シアに一礼し下がった。
悔しかったし、情けなかった。
どれほどプライベートを共有していても、大事な場面で好きな女に負けているのでは、彼女の特別な存在になどなれっこない。
「この調子じゃあな。そうだ、リルアム!おまえ、参加しろ!」
シアが仮にも上官に向かい怒鳴る。
勘弁してくれと肩をすくめていたリルアムだが、しつこく食い下がるシアに根負けしたようで、馬を降りて近づいてきた。
リルアムが手を差し出したので、レンカは自らの模造刀をリルアムに渡した。
レンカは剣を握り直し、つま先にじりと力を入れた。
斬り結ぶこと数回。
シアの剣が横薙ぎに頭上をかすめる。
大振りはチャンスだ。
レンカは身をかがめ、懐に入り込んだ……はずだった。
しかし、そこにあったシアの身体は、たった一歩の踏み込みでレンカの背面に異動していた。
余裕たっぷりにシアがレンカの後頭部を剣の柄で小突いた。
「動きが直線的過ぎる。腰と肩の向きで攻撃の角度が丸わかりだ。だが、反応はまあまあだ」
レンカは唇を噛み締め、シアに一礼し下がった。
悔しかったし、情けなかった。
どれほどプライベートを共有していても、大事な場面で好きな女に負けているのでは、彼女の特別な存在になどなれっこない。
「この調子じゃあな。そうだ、リルアム!おまえ、参加しろ!」
シアが仮にも上官に向かい怒鳴る。
勘弁してくれと肩をすくめていたリルアムだが、しつこく食い下がるシアに根負けしたようで、馬を降りて近づいてきた。
リルアムが手を差し出したので、レンカは自らの模造刀をリルアムに渡した。