* 竜の眠る国 *





 ―――そう。私は、知っている。





 周りの人達は私に気づかない。


 お城の回廊を抜け、光溢れる外に出れば、風が優しく吹いて―――目の前には、銀の竜が降り立つ。





 美しい、竜。



 深海の瞳。透き通る翼は、綺麗な空色で。


 その大きな躯は、光り輝くシルバー。






 ゆっくり、飛ぶようにトン…と落ちた私は、自分が裸足だったと気付いた。


 足下にはふかふかの緑の絨毯。



 城の中、通り過ぎた私に誰も気づかなかった。


 ―――でも。


 目の前の竜は、私を見た。


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