* 竜の眠る国 *





 ユウナの胸に光る鱗を手にし、シオンは力強く握り締めた。



「よし…!
 城まで一気に駆ける。

 ―――ゆくぞ」



 竜に頭を下げるとすぐさま私を抱き抱え、そのまま外へと急ぐ。

 広間にいた兵士達は、シオンに遅れないように慌てて支度をし、聖竜と伝説のユニコーンであるエルクを横目で見ながら王子の後に続いた。





 最後の一兵が頭を下げこの場から居なくなると、エルクは横たわる竜を見た。

 その表情は何か言いたげで、竜は気付いていながらも目を合わせることはなかった。

 すると、エルクは意を決したように何かを言いかけて、またすぐ下を向き、今度こそ、表情を変えて竜を見て口を開いた。




『……何故、ユウナを助けなかったのですか?』



“森の番人”として、人々から恐れられているエルクの足が、震えていた。












< 257 / 287 >

この作品をシェア

pagetop