追憶の灰
「光、何してるの?!」

近付こうとする陽斗に
「来ないでって言ってるでしょ!!」
視線を外さず目で止める。


陽斗が止まったのを確認して、私は金網に手を掛けた。

「光、バカなこと止めて」

「ここから飛び降りる!!そうしたら、何処にも行かなくて済むから」

「…死んじゃうよ」

「……」

「光」

「……」

「光!!こっち来て」

「いやっ!!飛び降りるんだから、邪魔しないで!!」


一歩、また一歩、網に足を引っ掛ける。


「…光!!!」

陽斗の静かで、それでいて強い口調に、身体が動かなくなる。


私を抱きかかえ、網から引き離すと、私は陽斗と向き合う様に下ろされた。

「光 落ち着いて」

今度は優しい陽斗の声に、ずっと堪えていた涙が溢れた。
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