やさしい記憶
「……」
観覧車の窓から
外を見下ろす朱鳥くんの横顔は
もういつもの彼に戻っている。
外はもう
すっかり日が落ちて
空にかすかに残る夕焼けの色が
ゆっくりと闇に向かっていた。
楽しい時間の
終わりを告げていた。
楽しかったね……。
「朱鳥くん」
「うん?」
「朱鳥くんは、美里のドコを好きになったの?」
あたしは
ずっと聞いてみたかったことを
質問してみた。
「……それは、命令?」
朱鳥くんの視線が
あたしを捕らえる。
感情の読めない
無表情な瞳。
ちょっとだけ、怖く感じた。