やさしい記憶
あたしは、仕方なく
小さく手を振ってみると
気付いた朱鳥くんは
目を細めて笑顔で答えてくれた。
「……」
本当にデートみたい。
そうだったら、楽しいだろうな
こんなカッコイイ人とだし。
「……」
あ、れ?
『お待たせ!』
とも
『ごめんね!』
も、言わない……。
彼は
向かいの席に座りながら
なんとも言えない顔で
あたしを見つめてきた。
ん?
「……」
「……???」
な、なんでしょう?
上目使いに
目で聞いてみる。