夏月一会


私は全部読んで、スケッチブックを抱き締めた。



「凪……」


自然と涙が伝った。



「さよなら……凪………」



これは、『別れ』だ。
だから、悲しいことじゃない。

だって、凪が言っていたから……


(別れは始まりだよ。次にまた出会いがあることの予兆だと思う。だから、別れを悲しいとも、寂しいとも、思わない)


終わりと同時に始まってるんだ。『これから』が……

そうだよね、凪……





あの夏の日々に見た、窓の外の景色は、すでに勢いを失っていた。

でもそれは、次の季節が来ていることを知らせている。


もう何一つ、悲しいことはない。







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