夏月一会

凪のリクエストは、和・洋・中…と、色々だった。

好き嫌いはないらしく、何を入れても残さずに食べていた。


私は、料理は好きで得意な方だし、何を言われても困りはしなかった。

むしろ、何を作るか考える手間が省けて、楽だった。



それにやっぱり、美味しいと言って、残さずに食べてもらうのが気持ちよくて、頑張ってしまう。





「はい。どうぞ」

私は凪の前にパスタ皿とサラダボウルを置いた。


パスタは、アサリの冷製スープ仕立てで、サラダのドレッシングは私のオリジナルだ。
今日も張り切って作った。



「美味しそう。僕、アサリ好きなんだ」

食卓を見てそう言いながら、凪は笑った。


「そう。よかった」


凪は、笑うと目尻が下がり、目が細くなって、本当に嘘のない、優しい顔になる。


私が作ったものを食べる時、凪はそんな表情になる。

その表情を見ると、私もつられて笑ってしまう。


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