夏月一会
言ったとおり、凪はすぐに下りて来た。


彼はまず、部屋中を見渡して

「なんか綺麗になってる」

まるで自然にそうなったかのように、凪は言った。


「そりゃそうよ。掃除したんだから」

自分でいうのはなんだけどかなり頑張った。

まだ全部ではないけど、あんなにひどかったのをここまでにしたんだから、褒めてほしいくらいだ。



「へぇ……すごいね」

ぽつりと凪は言った。


本当に言われるとは思わなくて、私は面食らってしまった。


「あ……ご飯、時間なかったから簡単なものしか出来なかったんだけど…」

戸惑いを隠すために、私は話を変えた。


「ううん。美味しそうだよ。誰かが作ったご飯食べるのなんて、久しぶりだな」

凪はそう言って、食卓を見ながら微笑んだ。


その言葉と表情が、予想外でびっくりした。


今日、出迎えられた時みたいに無関心な態度をとられるのかと思ったら、違った。


凪の言葉と表情には、温もりがあって、少しドキッとしてしまった。


よく見ると、凪はとても綺麗な顔立ちをしていて、笑うとそれが際立つ。


それに対して私は、思わず赤くなりそうだった。


何を考えてるんだろう。

こんな五歳も年下の男の子に対して……




こうして、私と凪が一緒に過ごす最初で最後の短い夏が始まった。




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