夏月一会

柳さんは少し間をあけて、頷いた。

「はい……誰が言ったというのは分からないのですが……ですが、凪さんも勘がよろしくて、凪さんと先生が本当の親子ではないということは、何となく感じていたようでした」


その言葉は、予想外だった。

凪は、知っていた。

本当に、知らなかったのは、私だけだったということだ。


でも、どうして……


「それなら、どうして私は、凪のところに……ここに来ることになったんですか?」


それは、初めから不思議に思っていたけれど……

今更になって、私が初めて凪に会う必要はあったんだろうか。

本来なら、私は真実を知らないまま…凪のことも知らないまま……生きていくことになっていたはずだ。

それに、伯父だって危惧していた。
私と凪の間に、何もなかったのか……

そんな心配をしてまで、どうして私に凪の世話という名目で凪に会わせたのか……


「それは……凪さんの、ご希望です」


私は耳を疑った。


「どういうことですか?」


「凪さんが、一度でいいからあなたに会いたいと……そう仰ったので……」


更に柳さんは、続ける。


「先生と凪さんは、親子としての関係は、あまりうまくいってませんでした。勿論先生は、凪さんは血が繋がっていないとはいえ、蔑ろにされたりはしませんでした。凪さんは、奥様が産まれた子供ですから……」

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