バース(アイシテルside伸也)
バース 4

兄貴

こたぁは話が終わり部屋を出て行った。


俺は亜美の傷の手当をしながら、猛のことばかりを気にしていた。



今頃になって、猛を殴った拳が痛み出す。



ドタドタドタ



静まり返った部屋に大きな足音が響き渡る。




こんな足音を立てるのは……



「シン」



やっぱりな。



何かを聞きつけたかのように、突然現れる。



帰ってきたら寄ってくれとは言ったけど、今日来るのがこの人らしい。



亜美は突然の来客に固まったまま動かない。



確かに怖いよな。



俺よりも一回り以上大きな体に、この目付き。



そして、何より人を近づけないこのオーラ。



本人は意識なんてしていないだろうけど……



今、目の前に立っているのは俺の兄貴。



殆ど一緒には暮らしていないけど、血の繋がった兄弟だ。



「女か?」



「はい」



部屋をぐるりと見回した兄貴が亜美に視線を移し、そう尋ねると何故だか亜美が返事をしだした。



亜美の怯える姿にも、間抜けな顔にも……



我慢できずに噴出してしまった。

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