バース(アイシテルside伸也)

決着


家の前に着き、チャイムを鳴らしてもインターフォンから亜美の声は聞こえてこない。



やはり、俺の顔などもう見たくはないのか……



道路に横付けしてある車へと戻り、煙草に火をつけた。



この煙草を吸い終えたら帰ろう。



そう思いながら煙草の煙を吐き出すと



「ごめん!!ちょっと出掛けてて」



という亜美の声が背後から聞こえる。



俺は声のするほうへ振り向くと、申し訳なさそうに俺の顔を見つめる亜美姿が……



その姿を見た途端に自然と零れる笑み。



「すっぽかされたかと思った」



冗談が言えるほど、今の俺には余裕なんてないはずなのに、亜美を目の前にするといつだって冷静な自分を演じてしまう。



「ご飯買いに行ってた」



「そうか」



「中で話そう」



「あぁ」



亜美のあとを追いかけるように、俺も家の中へと入る。

< 250 / 355 >

この作品をシェア

pagetop