沙羅の糸車
出逢い
カラン
中島歩の、勤める雑貨屋にスーツ姿の男性が入ってきた
「いらっしゃいませ。」
声をかけたが、ほとんど無視だ。

「悠紀子、感じ悪くない?」
「そう?イケメンだし、スーツも上等だよ?」
そういう見方もあったのか、と思いながら目で追いかけ始めた。歳は20代後半から30歳くらい。

しかも、歩のお気に入りの輸入雑貨コーナーを熱心に見ている。この店は小さいながらヨーロッパにオーナーが、買い付けに行っているし平行輸入で仕入れたお手頃価格のハンドメイド作品も多い。

店内は落ち着いたダークな茶色を基調に整えられている。
アロマポットからシダーウッドの香りが清潔に店内を漂っている。

「アユンコ!時間じゃん?珍しく行くんだよね~?」
「はあ~、面倒くさ。人数合わせの合コンだよ?」
悠紀子は歩の背中をつつきながら
「それにしては、いつもより素敵なお召し物ですなあ~」
「もう、勘弁!本当に無理矢理なんだってば~」
「アユンコ、その指先は何?マニキュアくらい塗りなさいよ顔は結構可愛いのに、こういう先端のおしゃれが大事なんだから」

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