婚カチュ。


「だからといって、きてくれるなら誰でもいいというわけじゃない。弁護士の仕事はなかなか大変です。田舎ではおそらく便利屋のような位置づけにもなるでしょう。
そうなると、やはりパートナーは機転の利く知的な女性がいい。ただし、積極的ではなく、控えめで、しずかに私を支えてくれるような、ね」
 

若すぎてはいけないし、成熟しすぎていてもいけない。
仕事をそれなりにしていて、なおかつその仕事をすっぱりと辞めて家庭に入り、夫を支えてくれる女性。
 
なるほど、なかなかに限定的だ。


わたしの思考を見抜いたように、彼はちいさくうなずいた。


「申し訳ない。これを先に話しておきたかったんです。私は傲慢な男です」

「……そうですね」
 

言葉を返すと戸田さんは目を丸めた。それから我が意を得たとばかりに身を乗り出す。


「二ノ宮さんの、その正直なところがとてもいい。自己主張が過ぎる方は困るが、不満をまったく口にしない方も爆弾になりかねない。気持ちは正直に話してくれるほうがいいです」

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