聖なる夜の願いごと


表情には出さなくともデュークにはシルバががっかりしている様が見えた。

エレナからとあって少し期待していたのだろう。




「クリスマスパーティーの招待状だったか?」

「あぁ、これはオベール公爵家からだ」

さすがに捨てはしなかったが、開きもせずに机の脇に置いた。

厚紙の表には“クリスマスパーティーへの招待状”とある。

恐らく裏側にはオベール公爵の署名と蝋印が押されているのだろう。



「オベール公爵からとは珍しいな。そこから招待状が来たのは初めてじゃないか?」

オベール公爵は先々代の国王、つまりシルバの父親の代からの家臣であり、シルバを支持する貴族の内の一人だ。



「あそこは最近、子が生まれたからな。確かもう六歳になるころだ。クリスマスパーティーは子供のために開いたようなものだろう」

齢はすでに六十を超えるが、子息に待望の子供が生まれ、それは初孫を可愛がっているそうだ。

今まで行事ごとに興味を示さなかったオベール公爵がクリスマスパーティーを開くとはオベール公爵の孫に対する可愛がりようが窺える。




「だが何故これだけエレナが持ってきたんだ?」

「さぁな。俺もウィルから預かったんだが、理由は言ってなかったみたいだぞ」

腑に落ちない表情をするシルバにデュークは少し口を挟んでみるかと思い、「まぁ…」とつなげる。



「この頃は訪問先といえばブラントン夫人のところばかりだったから、たまには他家のパーティーにでも行きたいんじゃないか?」

デュークの言葉にシルバは意表を突かれた様に目を見開く。




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