聖なる夜の願いごと


「それは残念でしたね」

労わるように腕に添えられたオベール夫人の手にエレナは眉尻を下げて笑みを作った。


「今宵は当家の料理長が腕によりをかけて作った料理をご用意しておりますので、どうぞお楽しみください」

「ありがとうございます」

気を遣わせてしまっただろうか。

エレナは居た堪れない気持ちを抱きつつ、クリスマスパーティーが催される大ホールに向かった。

招待客たちが一堂に会するホールはエントランス以上に光り輝いていた。

料理長が腕を振るった色とりどりの料理、それを引き立たせるような磨き上げられた銀食器。

見事な天井画からホールを照らすシャンデリア、そして煌びやかなドレスに身を包んだ人々。

このパーティーは間違いなく国内でも指折りの豪華絢爛さだろうとエレナは思った。

そしてもう一つ、オベール公爵家のクリスマスパーティーが一風変わっている点がある。

パーティーといえば集まるのは成人した男女だが、今日は子供の姿がちらほらいるのだ。

ホールの中心には大きなモミの木が置かれ、その根元には綺麗な包装紙に包まれたプレゼントがいくつもある。

そう、今宵のクリスマスパーティーはオベール夫妻が孫のために開いたものだったのだ。

子供たちのために用意された背の低い椅子や一人ひとり用意されたお菓子に、オベール夫妻の細かな気配りがうかがえる。

招待状にはたくさんの子供を招待してクリスマスパーティーを盛大なものにしたいとあったため、招待客の中には子供や孫を連れ、家族で来ている者たちが多くいる。



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