仮面夫婦
「まだ髪が濡れてる」


「そうですか?」


「おいで」


隆哉に手をひかれて洗面所に連れていかれる


その握られている手がやけに熱い


「ほらおいで」


「自分でやりますから」


「いいから」


半ば強引に椅子に座らされ


優しい手つきで隆哉は私の髪を乾かしていく


「もうすぐ大きいオペがある。それが成功したら俺は院長だ。」


「そうですか。おめでとうございます」


「緊張するよ、さすがに。まだ医者になって五年しかたってないのに。病院を背負うんだ」


「すごいことです。頑張ってください」
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