極上の他人
高まる思い


「やっぱり捕まったんだ」

いつもの私の指定席であるカウンターの端の席に腰掛けた途端、聞こえてきた声。

視線を向けなくてもわかる、千早くんの声だ。

「見事、捕まりました」

笑うに笑えない声でそう返すと、千早くんは苦笑した。

「輝さん、ふみちゃんから店には来ないってメールを受け取ったあと、絶対に史郁をひとりにはしないって言って慌てて迎えに行ったんだ。
よっぽどふみちゃんのことが気がかりみたいだね。というよりも、心配し過ぎ?
小学生じゃあるまいし、ひとりで帰らせちゃいけないとかなんとか焦りまくりだったし」

「うそ……」

「嘘じゃないよ。ふみちゃんを一人にしておくわけにはいかないってのが、輝さんの最近の口癖。
まさかふみちゃんってかなりの方向音痴で一人で家に帰れないとか、暗い部屋にひとりでいると怖くて泣いちゃうとか……あ、失礼、そんなこと、ないよね」

「私はちゃんとした大人で、毎日働いてお給料ももらっている自立した女です。なんでも一人でできます」

失礼なことを言い続ける千早くんにきつめの声音で答える。

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