極上の他人


「ひじきの煮物は冷凍しておけばしばらく大丈夫だから」

初めて会った男性に私の食生活の心配をされるなんて想像もしていなかったけれど、一人で暮らしている私にはとてもありがたかった。

小さな頃から、自分の事は自分で責任を持たなければいけないと、必要以上に虚勢を張って生きてきた。

そのせいか、しっかりしなきゃと、いつも自分を叱咤している。

私のそんな背景を知らないとはいえ、私を緩やかに支えてくれるような輝さんの言葉に、私の張りつめた感情は、思いがけず、ほどけていく。

「せっかく可愛い顔をしてるんだから、栄養のある食事と睡眠に気を付けて、それを活かさなきゃな。仕事を頑張ってるのは亜実さんからも聞いてるけど、それだけじゃもったいない」

「もったいない?」

「ああ。仕事以外にも、楽しみを見つけて笑って過ごして欲しい……いや、余計なお世話か。それに、説教くさいな」

ほんの少し照れたような表情で、輝さんは目を細めた。

その様子はまるで、妹を可愛がるお兄ちゃんという雰囲気そのものだ。

ぽんぽん、と私の頭を撫でてくれる仕草も同様。

私を妹のように見ているんだろうと感じて、予想外に気持ちが沈んでいく。


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