極上の他人


忙しい毎日の中で、輝さんが私のために割いてくれる時間。

毎日会社への送迎をしてくれるだけでなく、食事も用意してくれて、優しく守ってくれる信じられないほどの居心地のよさ。

いつか輝さんの側を離れる時に、心の傷が少しでも小さいように、いつでも逃げられるように。

輝さんに対して及び腰になっていたけれど、やっぱり。

好きな気持ちに嘘はつけない。

輝さんが用意してくれる夕食を楽しみにしていること、仕事を終えた私に「お疲れ様」と言って温かい手で私の手を包み込んでくれる瞬間を待ちわびていること。

もう、無理矢理否定しない。

輝さんに、私の気持ちは受け入れてもらえないとわかっていても。

輝さんが自分の意志で私の側にいてくれるのなら、私も自分の意志で輝さんの側にいよう。

そう決めたからには、輝さんのお店にも、笑顔で、明るい気持ちで顔を出そうと思う。

そして、少しでも長く、この幸せな時間が続きますように、と願った。

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