極上の他人


私が熱を出して寝込んだ時にくれたキスよりも、更に深い思いと決意を私に感じさせるようなキスが止まる気配はない。

お風呂に入っておいで、と言ってくれたのに、そのことも忘れているようだけれど。

「史郁……」

キスの途中、苦しげに呟きながら私の頬を撫でる輝さんの指先にふっと痺れ、足元から力が抜けていく。

「ずるい……」

やっぱり、輝さんはずるい。

私が堕ちるように、そして逃げないように、私が喜ぶ言葉と声で攻めてくる。

大好きな人から、私の事を心から欲しているような苦しげな声で求められて、拒むなんてできるわけがない。

それに、私が愛する人から自分を求められることをどれだけ望んでいたか、お見通しなんだろうと。

輝さんのずるさを改めて感じて、悔しい気持ち以上に嬉しくて幸せで。

ふっと体中の力が抜け、足元から地面に沈んでいくようなふわふわした感覚に襲われてしまう。

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