極上の他人


輝さんの首筋に顔を埋めて、きっと泣き顔に違いない顔を隠す。

今日一日、驚くことばかりが立て続けに起こって、それに感情が追い付けずにいる。

真奈香ちゃんが輝さんの車に乗り込むところに出くわして衝撃を受けたのがかなり前のことのようだけれど、それは今日の夕方の出来事。

お母さんと何年かぶりに会い、改めて私を愛していないと思い知らされたのも今日の出来事だ。

思いがけない展開に適応するための時間がもう少し欲しい。

おまけに、気になっていた女性が輝さんの恋人ではなかったと知って心からほっとし、更に。

『惚れている』

と輝さんに告げられて、涙が溢れる私を見られたくはない。

「どうした?」

輝さんの首に両手を回し、ひたすら顔を埋める私に、輝さんが心配そうに声をかけてくれる。

< 362 / 460 >

この作品をシェア

pagetop