ゆびわ


不意に名前を呼ばれた。
反射的に振り向くと、白い息を吐きながら小走りしてくる女性がいる。

最近、視力が低下しているのも重なって直ぐには誰かわからない。

「もー、由宇ったら全然気づかないんだもん」

だから、それが中学の同級生だった朱鳥(あすか)だと認識したのは、会話が出来る直ぐ近くまで来てからだった。

「ごめんごめん。ちょっとボーッとしててさ…それにしても、久しぶりだね。朱鳥。」

「ほんとに、おひさ。元気してた?」

「元気元気ー、朱鳥も?」

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